専門図書館288号(2018年3月)特集:図書館をアピールする(詳細)

特集「図書館をアピールする」にあたり【p1】
雑誌の図書館「大宅壮一文庫」再生への挑戦【p2-7】鳥山 輝(公益財団法人 大宅壮一文庫専務理事)
マスコミ関係者を中心に利用されてきた大宅壮一文庫は、近年利用者が減り、赤字が続いていた。このままでは存続が危ういため、2017年から経営再建に着手し、クラウドファンディング(CF)や大宅文庫フォーラムなどに取り組んでいる。CFには「大宅文庫は大切な文化遺産。がんばって存続を」といった応援メッセージとともに支援金が続々集まり、マスコミ各社が大きく報道した。反響の輪はさらに広がり、大口寄付などにも結びついた。この結果、再建初年度は黒字転換の見通しがついたものの、利用者の減少は依然続いている。今後も日本出版学会や大学との連携などで攻めの展開を続ける一方で、明治以降の雑誌を大量にそろえる大宅文庫の強みを最大限生かす方法を具体化し、存続策を軌道に乗せたい。
海と地球の学術情報拠点を目指して
 ~ JAMSTEC図書館10年の取り組み~【p8-14】
長尾 典子(国立研究開発法人海洋研究開発機構 研究推進部研究推進第2 課)
昭和46年に設置された国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)。その図書館は、所属職員へのサービスを本務としつつ、幅広い年齢層を対象とした一般公開図書館を運営しているという特徴を持つ。長く続いた業務委託から直接雇用体制に変更され10年目を迎えたJAMSTEC図書館が、業務の再整理を進めながら内外へのアピールを行い、利用を促進し「海と地球の学術情報拠点」を目指した取組みについて紹介する。
連携する「知の拠点」【p15-20】高橋 和敬(千代田区立日比谷図書文化館 図書サービス部門)
千代田区立日比谷図書文化館には「図書館機能」、「ミュージアム機能」、「文化活動・交流機能」、「アカデミー機能」の4 つの機能があり、それぞれが相互に連携することで、それぞれが情報発信の役割も担っている。様々な知識や情報を様々な形で収集し、発信していくことが日比谷図書文化館の目指す「知の拠点」である。外部との連携範囲が広がり、より公共的なつながりを構築すればするほど、それだけ日比谷図書文化館を知ってもらえる範囲も広がる。単なる知の集積地としてではなく、4つの異なる機能を連携させ、また外部と積極的に連携し、情報発信していくアクティブな「知の拠点」が日比谷図書文化館である。
専門図書館のアピールは“スイミー作戦”で【p21-27】関 乃里子(株式会社ブレインテック・図書館総合展運営委員)
図書館総合展運営委員会と専門図書館協議会は、2016年と2017年の図書館総合展において「こんなにあります!あなたも使える専門図書館」と題した、パネル展示を実施した。これは、一般公開されている専門図書館を他館種の図書館関係者に広く知ってもらうことを目的とした展示で、展示方法自体は簡素ながら多くの来場者に好評を博した。ここで採用した展示スタイルは、小規模図書館がたくさん集まることで、個々の館の負担を最小限に抑えながら大きな存在感を示すという、絵本「スイミー」のストーリーに似たアピール方法である。このパネル展示が開催されるまでの経緯を振り返ったあとで、実施後に広がる各地での巡回展や関連展示などのアクションについて具体的に紹介する。
専門図書館を見つけるウェブサービス
 -ディープライブラリー・プロジェクトのコンセプトと展開【p28-33】吉本 龍司(株式会社カーリル)
活動を開始しておよそ3年が経過した「ディープ・ライブラリー・プロジェクト」(通称・ディーリブ・dlib.jp)だが、検索対象になっている専門図書館の機関数も100を突破し、徐々に広がりつつある。この論考では「ディーリブ」の近年の動向や技術的進化、今後の展望について技術部分を担当するカーリルの視点から、自分たちの図書館をアピールしたい専門図書館の現場にいるみなさんに向けて記した。なお本稿は、『情報の科学と技術』66巻9 号,p.452~456(2016)「専門図書館の発見可能性を向上する-ディープライブラリー・プロジェクトのコンセプトと技術」を最新の状況にあわせて加筆・修正した。
他にウリがなければ図書館員自身をブランディングしよう
 ~ないないづくしの小規模専門図書館が言い訳しないで生き残る知恵と工夫~【p34-40】
仁上 幸治(図書館サービス計画研究所代表)
図書館をめぐる客観的環境条件は厳しくなる一方である。その中で個々の図書館が行う広報、業界としての広報は年々規模も質も拡大している。図書館の現場で広報への関心は高まっている。しかし、それが図書館と図書館員の存在感を高め、味方を増やし、社会的地位の向上につながっているかは疑問である。PRの誤解を始め、10年前に指摘された弱点は克服されていない。親機関からの評価を上げるには、図書館内にこもって外に出ることに消極的な図書館員イメージを打破し、積極的なアピールを目指す広報マインドのある人材が必要である。そのためには図書館員自身をブランディングすることが有効である。知識・技能・姿勢を高める研修のあり方を見直し、研修実績を専門性のアピール材料として活用するべきである。日常生活における情報感度を高める意識と習慣が求められている。
全国遺跡報告総覧について【p41-44】矢田 貴史
OBPアカデミア【p45-47】法宗布 美子
農業研究の専門図書館より【p48-49】小笠原 未来
図書館員のためのイベント実践講座【p50-51】青山 志織
〈本の世界〉の見せ方 明定流コレクション形成論【p51-52】大平 奈美
平成29年度 専図協イブニングセミナー(関東地区)報告
 専門図書館員のための法情報の調べ方 No.2
 「法令の基礎と調べ方、リサーチ実習」【p53-54】長崎 浩己
『第19回図書館総合展』のご報告【p55-56】専門図書館協議会事務局
事務局だより【p57】事務局
各種セミナー報告【p58】事務局